HAMPUS LINDWALL による痛烈なまでに異彩を放つ、ポスト・インターネット時代のパイプオルガン作品『Brace for Impact』が Ideologic Organ より。

HAMPUS LINDWALL の『Brace For Impact』。Matiere Memoire の 20' FOR 2020 - SERIES 3 にも名を連ねる、HAMPUS LINDWALL によるアルバム『Brace for Impact』は、ポスト・インターネット時代のパイプオルガン・アルバムと言えるような５曲を収録したアルバムで、ネットワーク化されたプロセスとアルゴリズム的思考に深く根ざした作品であり、独自のシステムを構築し、崩壊へと導くような異色のオルガン楽曲が並びます。

『Brace for Impact』は、パイプオルガンが持つ紀元前３世紀にまで遡る歴史的価値を超えて、アルゴリズムやネットワーク文化に翻弄される現代社会へと訴えかける、HAMPUS LINDWALL による現代のためのオルガン・アルバムで、すべての曲で HAMPUS LINDWALL 自身が、ドイツ・デュッセルドルフの聖アントニウス教会にある 78 のストップから成るグランドオルガン演奏から構築した、非常に直感的かつ根源的な力を持った 45 分間の特異なオルガン作品。タイトル曲では、SUNN O))) のステファン・オマリーによる連続するスライドの轟音エレキギターをフィーチャーしています。

現在パリのサンテスプリ教会でオルガン奏者を務め、Phill Niblock、Leif Elggren そして Susana Santos Silva など多くのアーティストと時折コラボレーションする HAMPUS LINDWALL ですが、90 年代レイブの美学が今日に至るまで彼の音楽的 DNA の重要な一部であり続けています。
HAMPUS LINDWALL は、自身の音楽を構成する要素を、既成概念に捉われず流用できるレディメイドのようなものと考えていて、手元にあるあらゆるテクノロジーを駆使し制作します。そのような考えから、マルセル・デュシャンの 1916 年の作品「A bruit secret (秘められたる音に)」にちなんでタイトルが付けられた曲では、オルガン鍵盤の 56 音すべてを乱数発生器に送り込み、様々な操作を施し、楽器の限界を押し拡げるように作り上げられています。

2019 年火災に見舞われたノートルダム大聖堂のグランドオルガンが修復され、５年ぶりに 32 フィートのパイプから和音が鳴り響き、NY セント・ジョン・ザ・ディヴァイン大聖堂、イングランドではノーリッジ大聖堂のオルガンの改修、その２年前にはヨーク大聖堂の 5,000 本に及ぶパイプ・オルガンの「100年に一度」と言う改修工事が発表され、さらには、リバプール、ブラッドフォード、ブリストル、ウィンチェスター、ワシントン D.C. の教会でも、オルガン修復プロジェクトが進行中です。それぞれの地域社会にとって重要な意義を持つこれらのプロジェクトは、人類最古の楽器の一つであるオルガンのより広範な再生を象徴するものでもあります。

そしてここ数年、Kali Malone、Ellen Arkbro、Anna von Hausswolff、FUJI||||||||||TA、Áine O’Dwyer といったアーティストによるアルバム、そして Sollmann Sprenger、Cory Arcangel、Massimo Bartolini といった才能豊かなアーティストによるビジュアル・アートのプロジェクトによって、古くから教会で重宝されてきたパイプオルガンが新たな注目を集めていますが、本作は、音と構造の細部にまで拘り、遠い過去に片足を置きながら、遥か先をしっかりと見据えた、痛烈なまでの即時性を持ち異彩を放つオルガン作品となっています。

TRACKLIST
1. Brace for Impact 07:34 / 2. Swerve 09:48 / 3. Á Bruit Secret 04:59 / 4. AFK 12:03 / 5. Piping 12:24