なぜ孤高かといえば、そもそもアンダルシア古典音楽でピアノは末席中の末席、スカンドラニが現代に開拓したも同然の演奏法であること。なぜ異端かといえばこの人以前のアンダルシア音楽のコンサートでピアノ独奏はありえず、また、題名にもなっている「イスティクバル」(アンダルシア宮廷音楽の様式のひとつ)をピアノでやるなど誰も考えつかなかった(当時も物議をかもした)。
■マメ知識■
アルジェリアの古典音楽はスペインのアラブ・イスラム王朝が起源のアンダルシア宮廷音楽とトルコの古典音楽が混同し、西洋/アフリカ先住民/ユダヤ系の影響も受け、東西文化が統合した混血度の高さが特徴。「イスティクバル」は宮廷音楽の組曲様式「ナウバ」の重要な前奏曲であり、幾つかの型(モード)がある。(※詳しくは解説を参照の事)それよりも先に、ここで展開されるオリエント/西洋/アフリカが鍵盤上で優雅に交差するさま、その不思議な世界が最大の魅力。和声に依らず単一の声部で構成されるアラビア音楽の特徴による、ピアノからつむぎ出される和声は一本の繊細な線のようで、それが優雅に、まるで東西世界を行き来するかにように動き回るのを聴くのは快感。バッハの「ゴルトベルク変奏曲」もそう遠いものには感じられない(実際、アラビア版「ゴルトベルク変奏曲」と評される事も)。混血度の高いアンダルシア音楽のなかでも『イスティクバルと即興』は折衷された様式の境界を更に曖昧にとけ込ませるようだ。 本アルバムは過去にCD化されているがおよそ20年をへて消滅し存在を知っている人すら極少数。また以前は曲の差し替えがあり本来のアルバムの意味を崩してしまっていたが、今回初めて曲順も忠実なアルバム単体の「完全版」となる。
・シルクスクリーン印刷/ハンドメイド・ジャケット
・ライナー封入(日本語・英語掲載)・少部数限定
■収録曲■
※各曲(モード)にそれぞれの変奏(即興)が続く形式で、全9モード/18トラックの収録となります。
1. Mode: Raml Maya/(2.) Improvisations
3. Mode: Moual/ (4.) Improvisations
5. Mode: Sika/ (6.) Improvisations
7. Mode: Araq/ (8.) Improvisations
9. Mode: Mezmoum/ (10.) Improvisations
11. Mode: Sahli/ (12.) Improvisations
13. Mode: Ghrib/ (14.) Improvisations
15. Mode: Zidane/ (16.) Improvisations
17. Mode: Kourdi/(18.) Improvisations
REVIEW
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