植物学者の銅金裕司によるインスタレーション『エコロジカル・プラントロン』を、作曲家の藤枝守がインスタレーション用のサウンド・システムに構築し記録したアルバムが復刻。
銅金裕司、藤枝守による『エコロジカル・プラントロン』(Yuji Dogane / Mamoru Fujieda / Ecological Plantron)。「植物からみた生きものたちのインターフェイス」。植物の視点から我々の身体を包み込む生態系の連鎖を音によって体感させるラディカルなインスタレーション『エコロジカル・プラントロン』(1994年) を再検証復刻。バイオアーティストの銅金裕司が、植物と話し植物から話しかけてくる装置を目指し、90年代初頭に研究開発した画期的なシステムそれが「プラントロン」だ (※関連の博士号論文もある)。植物 (ラン) から生態電流を取り出して人間の知覚できる物理現象に変換するこの装置は、植物の知性をヒトが感得できるか探ることを第一義とし、物理現象じたいを興じるためのものではない。
『エコロジカル・プラントロン』はこの「プラントロン」を運用した初のインスタレーションによる <音> の記録。本作は銅金の「プラントロン」を作曲家の藤枝守がインスタレーション用のサウンド・システムに構築したもので、植物とヒト環境の往信で生まれた生態電流を電子音にプログラム変換、不定形かつ不規則な電子音の粒が放出される (※注)。強引に例えればクセナキスやペンデレツキの図形楽譜曲にどこか似た雰囲気を想像できるかもしれない。生態電流といえば、ヒトの脳波を使ったローゼンブームやルシエらの実験音楽が思い出されるが、本作はヒト主体でなく植物ファースト、そもそも <音楽作品> として提示されていないことを記しておきたい。
今回の復刻ではギャラリーで制作された自主盤音源をリマスターし、『エコロジカル・プラントロン』から派生した二つの作品「マングローブ・プラントロン」と「ピアノラ・プラントロン」をボーナス・ディスクに収録した。LP版の発売は初となる。
本装置の1991年の実験公開以降、疑似・類似の試みがいまも出現しているが、そのオリジナルが「プラントロン」であったことは明記しておく。解説には銅金の最新寄稿を掲載し、この実験と開発秘話、本作の意図を改めて探る。
※注 - 藤枝守は、ヒトが制御不能のこの音塊からある種の規則性を聞き出うとする過程で現代音楽が置き去りにしてきた「メロディー」を再発見し、それを端緒に「植物文様」というシリーズを作曲し発表している
- CDとヴァイナルがあります。フォーマットを選択しカートに入れてください。
Tracklist
CD 版
DISC 1 -『Ecological Plantron』(1994 年オリジナル録音)
1. Evening / 2. Night / 3. Morning / 4. Afternoon
(収録時間:72 分)
DISC 2 - Unreleased Recordings
1.「マングローブ・プラントロン」(1995 年:未発表)
2.「ピアノラ・プラントロン」(1997 年:未発表)
(収録時間:70 分)
LP 版 (CDより2セッションを抜粋)
Side A. Evening (from 'Ecological Plantron')
Side B. Night (from 'Ecological Plantron')
REVIEW
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